美味しいと思うと残る
食事文化の特色が食物のあり方に影響を与え、それが各地の栄養生態類型の特徴を規定することがしばしばみられるわけである。
この場合、とくに重要なことは、民族により、あるいは文化によって、食物の嗜好性が著しく異なることであり、それによって食物の選択が行なわれることである。
もっとも身近な例としてモチ性食品の例をあげることができる。
インドから東南アジア、中国中南部を経て日本に至る地帯は、現在、稲作地帯になっている。
以前にはアワ・キビ・モロコシ・ヒエなどの雑穀類もかなり栽培されていたと思われるが、これらの禾本科作物の種実に含まれるデンプンは、一般に粘り気のないウルチデンプンである。
しかし、突然変異で種実内に粘り気の強いモチデンプンをもつ個体もしばしば現れるという。
問題は、そうしたモチデンプンを「うまい」と考えるかどうかである。
ヒマラヤの南麓から中国中南部を経て日本に至る照葉樹林帯では、原因はよくわからないが、とにかくネバネバしたモチデンプンを「うまい」と考える文化が存在し、そこではモチゴメだけではなく、モチアワ、モチキビなど、多くのモチ種の品種群をつくりあげた。
それとともに、モチをはじめオコワやチマキなど、各種のモチ性食品をつくり出すに至ったのである。
うまいと思わない地域では別の物で必要な栄養を補ってきた。
今で言うモリンガなどのサプリメントのようなものを使うこともあった。